精神障害で障害年金|診断書からわかる等級の目安
この記事の内容
精神の障害による障害年金請求の際、診断書の記載内容を確認することにより、事前に何級に該当するかの「目安」がわかるようになっています。
あくまで「目安」である点に注意が必要ですが、請求する側からしてみれば、おおよその見通しが立つことは安心材料です。
ただし、障害の状態がきちんと反映された診断書を作成してもらうためには、日頃から主治医に対し日常生活の状況を正確に伝えておく必要があります。
そして、日常生活についていったい何を伝えれば良いのかのヒントは、診断書等に記載されているのです。
精神障害は総合的に判定される
精神障害の等級判定は、その程度を検査数値などによって客観的に知ることができないため、診断書の記載内容等から「総合的に」判断されます。
注意点その1
認定基準には、「認定に当たっては具体的な日常生活状況等の生活上の困難を判断するとともに、その原因及び経過を考慮する」と記載されています。
よって、この記事で紹介している「障害等級の目安」だけで等級が決まるわけではありません。
「生活上の困難」の「原因」や「経過」が考慮され、「総合的に」判断される点に注意しましょう。
注意点その2
障害年金の請求は、診断書の点取りゲームではありません。
診断書の記載内容はたしかに重要ですが、それだけで支給不支給、あるいは等級が決まるわけではありません。
発病時からの病歴や就労状況、発達障害であれば成育歴等が考慮され、「総合的に」判断されます。
注意点その3
上記の注意点からわかるように、「障害等級の目安」で2級に該当している診断書を提出したのに3級で認定されたというようなことも、十分あり得ることです。
一方、「障害等級の目安」で非該当に当てはまる診断書を提出して支給の決定がなされることは、ほぼないものと思います。
つまり、「診断書が重要であることに間違いはないが、それがすべてではない」ということです。
等級判定ガイドライン
かつては、障害基礎年金の審査は都道府県ごとに行われており、審査結果に地域差が生じていました。
そのため、2016年(平成28年)9月から「国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン」が運用され、地域差が生じる都道府県ごとの審査はなくなりました。
さらに、上記ガイドラインにより、診断書の記載内容から等級判定(何級に該当するか)の「目安」がわかるようになっています。
日常生活能力の判定・程度
上記の「目安」を知るために用いられるのが、診断書裏面の「日常生活能力の判定」欄の記載と「日常生活能力の程度」欄の記載です。
診断書(精神の障害用)
診断書(精神の障害用)
この記載をもとに上記ガイドライン中の「表1 障害等級の目安」を確認することにより、おおよそ何級に該当するのか、障害等級の目安がわかるようになっています。
精神の障害に係る等級判定ガイドライン
(例)等級の目安の求め方
例として…
たとえば、次の①②の場合、上記の表に当てはめると、等級の目安は「3級 又は 3級非該当」となります。
①「日常生活能力の判定」の7項目は、すべて左から2番目の「自発的にできるが(おおむねできるが)時には助言や指導を必要とする」にチェックがついている。
②「日常生活能力の程度」は、「(2)精神障害(知的障害)を認め、家庭内での日常生活は普通にできるが、社会生活には、援助が必要である。」に○がついている。
【表の見方】
「日常生活能力の判定」については、「4段階評価について、程度の軽いほうから1~4の数値に置き換え、その平均を算出」します。
この例では、すべて軽い方から2番目にチェックがついていますので、数値に置き換えるとオール2であり、平均は「2.0」となります。よって、表を見るときは、「2.0以上2.5未満」の行を右方向に見ていくことになります。
また、「日常生活能力の程度」については、(2)に○がついています。表を見るときは、そのまま「(2)」の列を下方向に見ていくことになります。
そして、「2.0以上2.5未満」の行と「(2)」の列が交わる箇所、つまり「3級 又は 3級非該当」が、このケースでの障害等級の目安ということになるわけです。
(2) | |||||
↓ | |||||
↓ | |||||
↓ | |||||
2.0以上2.5未満 | → | → | → | 3級 又は 3級非該当 | |
【補足】
仮に、この例のように「3級 又は 3級非該当」の場合、3級まである障害厚生年金を申請できる人(初診日時点で会社員等であり、厚生年金に加入していた人)であれば、3級で受給できる可能性はあるものの、2級までしかない障害基礎年金を申請する人は、受給できる可能性はあまりないということになります。
※注意事項
目安と異なる認定結果になることもあり得ます。
診断書記載要領にはどう書いてあるか
では、医師用の資料である「障害年金の診断書(精神の障害用)記載要領」には、この部分についてどのように書かれているのでしょうか。そこには次のような記載があります。
障害年金の診断書(精神の障害用)記載要領
ポイント
ここでのポイントは、次の4点です。
- 「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」には整合性が求められる。
- 各項目について、「一人暮らしで支援がない状況だとしたら可能かどうか」を判断する。
- 診察時だけの状況ではなく、それ以前1年程度の症状から判断する。
- 一人暮らしであっても、家族等から支援を受けている場合はそれを考慮し、能力の過大評価にならないよう注意する。
これらはつまり、障害の状態を正確に反映した診断書を作成してもらうためには、診断書の「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」で問われている項目について、日頃から主治医に状況を伝えておくことが大切だということです。
その際、診断書の「日常生活能力の判定」の7項目について、自身の状況を具体的に書いたものを参考資料として主治医に渡すのも一つの方法です。
まとめ
精神障害の等級判定は、日常生活能力を重視して「総合的に」判断されます。
かつては、その判断に都道府県ごとのばらつきがあり、ガイドラインが作成されるに至りました。
そして、そのガイドラインには等級判定の目安が示されており、診断書の記載内容を当てはめることによってある程度の等級予想が可能となっています。
障害の状態をきちんと反映した審査を行ってもらうためには、つまりは医師に障害の状態が正しく反映された診断書を作成してもらうためには、日頃から主治医に日常生活の状況を伝えておくことが大切なのです。
参考リンク(日本年金機構のページ)
🔗障害年金の診断書(精神の障害用)記載要領~記載にあたって留意していただきたいポイント~
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