精神障害で障害手当金はもらえるのか?

結論

もらえるとは考えにくいです。精神の障害による「障害手当金」の決定件数は、少なくとも令和4年度において、全国で0件です。

理由

障害手当金が、「傷病が治った(症状が固定した)ものの、障害が残っている状態」を対象としているためと考えられます。

精神障害の特徴は、症状が固定しないことであり、また、「疾病と障害の共存」です。仮に精神疾患が「治った」とすれば、それはすなわち障害がなくなったことを意味し、障害手当金の対象にはなりません。

これは、身体障害と精神障害を比較すると、わかりやすいかもしれません。

たとえば、交通事故による大ケガで、両足を切断した人がいたとします。その人は身体障害の状態にはありますが、病気ではありません。大ケガも治って(症状が固定して)います。つまり、傷病は治り、障害が残っている状態です。

それと比較し、精神障害の場合、病気ではないにもかかわらず精神障害だけが残っているという状態は、考えにくいと思います。

生活や労働に制限を受ける精神障害があれば、それはすなわち精神疾患が治っていないということであり、つまり障害手当金の対象ではないと考えるのが自然です。

障害手当金とは

障害手当金とは、初診日から5年以内に病気やケガが治り、3級の障害よりもやや軽い障害が残ったときに支給される一時金です。以下、その受給要件等を確認していきます。

原則的な受給要件

障害手当金を受給するには、次の要件を満たすことが必要です。

障害手当金の受給要件

  • 病気やケガの初診日において、厚生年金の被保険者であったこと
  • 初診日の前日において、保険料納付要件を満たしていること
  • 初診日から起算して5年を経過する日までの間における傷病の治った日において、厚生年金保険法施行令別表第2に定める程度の障害の状態にあること

※「治った日」には、「症状が固定して治療の効果が期待できない状態に至った日」を含みます。

厚生年金保険法施行令別表第2

この別表において、精神障害の障害の程度は、次のように定められています。

22.精神又は神経系統に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの

※保険料納付要件は、1級~3級の障害年金と同様です。下記のページも参考としてください。
🔗3つの受給要件 (wakamiya-sr.com)

※厚生年金法施行令別表第2に定める障害の程度について、下記のページも参考としてください。
🔗障害の等級・障害の程度 (wakamiya-sr.com)

支給されない場合

上記の原則的な要件を満たしている場合であっても、障害の程度を定めるべき日(傷病の治った日)において、次のいずれかに該当する人には、障害手当金は支給されません。

こんな場合は支給されません

・国民年金、厚生年金を受け取っている場合
もう少し正確に言えば、「厚生年金保険法による年金たる保険給付、または国民年金法による年金たる給付の受給権者(ただし、障害年金の受給権者で3級不該当のまま3年経過後の人を除く)」

・労働基準法または労働者災害補償保険法等により他の障害補償を受け取っている場合
もう少し正確に言えば、「同一の傷病について、労働者災害補償保険法や国家公務員災害補償法等による障害(補償)給付等を受ける権利を有する者」

障害手当金の額

障害手当金は、一時金で支給されます。その額は、障害厚生年金の報酬比例の年金額の2倍です。

なお、下記の通り最低保障額が定められています。

令和6年度の最低保障額

1,224,000

年金額については、下記のページも参考としてください。
🔗令和6年度の障害年金額 (wakamiya-sr.com)

時効

傷病が治った日(症状が固定した日を含む)から5年以上が過ぎた場合、時効により障害手当金を請求することができません。

🔗年金の時効|日本年金機構 (nenkin.go.jp)

参考リンク

🔗障害年金|日本年金機構 (nenkin.go.jp)