うつ病で障害年金をもらうには客観的事実が重要です

この記事の内容

うつ病と診断された人は、どのような状態なら障害年金をもらえるのでしょうか?

「仕事ができずに引きこもっており、誰かの助けがなければ日常生活が成り立たない状態」であれば、もらえる可能性は高いと思います。

一方、うつ病と診断されたものの、持ち前の我慢強さで苦痛に耐えながら、生活のためにやむを得ず仕事を続けているような人は、もらえる可能性が低くなります。

なぜなら、障害年金の審査においては、「持ち前の我慢強さで苦痛に耐えながら、生活のためにやむを得ず」という部分が考慮されないからです。

なぜ考慮されないのかといえば、個人の内面的な部分は客観的に証明できないため、考慮のしようがないのだろうと思います。

どのような状態ならもらえるのか

等級の例示

そもそも、うつ病による障害がどの程度なら障害年金をもらえるのでしょうか。

障害年金の認定基準には、等級の例示として次のように記載されています。

1級

気分(感情)障害によるものにあっては、高度の気分、意欲・行動の障害及び高度の思考障害の病相期があり、かつ、これが持続したり、ひんぱんに繰り返したりするため、常時の援助が必要なもの

2級

気分(感情)障害によるものにあっては、気分、意欲・行動の障害及び思考障害の病相期があり、かつ、これが持続したり又はひんぱんに繰り返したりするため、日常生活が著しい制限を受けるもの

3級

気分(感情)障害によるものにあっては、気分、意欲・行動の障害及び思考障害の病相期があり、その病状は著しくないが、これが持続したり又は繰り返し、労働が制限を受けるもの

簡単に言うと

なんだか難しそうなことが書いてありますが、要約すると次のような感じでしょうか。

1級~3級を簡単に言うと

  • 1級「ほぼ寝たきりで、自分では身の回りのことが本当にまったく何もできない」
  • 2級「ほぼ引きこもりで、誰かの助けがないと身の回りのことができない」(1級に該当するほどではない)
  • 3級「働けず、身の回りのことをするには助けが必要な部分もある」(2級に該当するほどではない)

障害年金をもらえる人

寝たきりの人

うつ病が原因で1日のほとんどを横になって過ごしているような人は、障害年金をもらえる可能性があります。

ほとんど寝ている(横になっている)わけですから、当然仕事はできず、身の回りのことも誰かの助けが必要です。

食欲がなくても何かを口にしなければ死んでしまうため、食事の準備や買い物など、必ず誰かにしてもらわなければなりません。

「ほとんど寝たきりだけど食べるものは自分で買いに行ける」という人もいるかもしれませんが、そのような人はここで言う「寝たきりの人」には該当しません。

引きこもりの人

うつ病が原因で自宅に引きこもり状態の人は、障害年金をもらえる可能性があります。

引きこもっているわけですから当然仕事はできません。

また、通院時以外はほとんど外出できず、食料品や日用品の買い物は誰かにやってもらわなければなりません。

そして、引きこもり状態になるほど気力がなくなっているわけですから、横になって過ごす時間も長くなります。

そうなると、食事の準備や洗濯など、身の回りのことは誰かにやってもらわなければなりません。

「自宅が好きだから引きこもってるけど、仲間と楽しくオンラインゲームをしている」という人もいるかもしれませんが、そのような人はここで言う「引きこもりの人」には該当しません。

仕事ができない人

うつ病が原因で仕事ができない人は、障害年金をもらえる可能性があります。

ただ、「仕事はできないけど身の回りのことは1人で何でもできる」という場合は、もらえる可能性は低くなります。

うつ病のために仕事ができず、かつ、多少なりとも日常生活にまで支障があるような状態であれば、もらえる可能性があるでしょう。

短時間労働はどうなのか?

うつ病が原因で短時間しか働けないのであれば、3級でもらえる可能性があります。

ただ、短時間でも仕事ができるということは、つまり身の回りのことは最低限自分でできると考えることができ、2級は難しいかもしれません。

障害年金をもらえない人

うつ病と診断されていたとしても、一般就労(フルタイム勤務)ができている人は障害年金をもらえないでしょう。

「仕事をしなければ生活していけないから、仕方なく無理して働いている」という人も多いでしょうが、それをいくら主張しても、おそらく障害年金はもらえません。

障害年金は書類審査であり、客観的事実が重視されるドライな審査です。

本人がつらかろうが何だろうが、そのような主観的な部分は重要ではありません。

言うなれば、内面の気持ちよりも客観的事実、言葉よりも実際の行動・行為が重視されるというわけです。

つらいと思ったり言ったりしていても、実際に仕事ができていれば、その人は「働ける人」なのです。

まとめ

うつ病が原因で寝たきり、引きこもり、仕事ができない人は、障害年金をもらえる可能性があります。

障害年金には専用の診断書が必要ですので、主治医に相談してみましょう。

ただ、障害年金は傷病年金ではないため、うつ病と診断されたからといって支給されるものではありません。

あくまで「うつ病による障害がどの程度か」によって判断されます。

そして、その判断には、本人の気持ち(つらい、苦しい、死にたい)は残念ながら関係ありません。

内面の気持ちよりも客観的事実が重視されます。

たとえ「苦しい思いをしながら仕事を続けている」とあなたが思っても、その「苦しい思いをしながら」の部分はきれいにカットされ、「仕事を続けている」という客観的な部分だけが残されます。

つまり、「苦しい思いをしながら仕事を続けている」という主張の意味するところは、単に「仕事を続けている」ということになるのです。

実は、つらい気持ちは、障害年金請求には関係ないものなのです。

この記事を書いた人

群馬県前橋市の若宮社会保険労務士事務所(障害年金社労士)
社会保険労務士・精神保健福祉士
鈴木雅人
事務所名若宮社会保険労務士事務所
代表者鈴木雅人
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