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病歴・就労状況等申立書とは
請求者自身が、自分の病状や困っていることを自分の言葉で伝えることができる唯一の書類、それが「病歴・就労状況等申立書」です。
障害年金を請求するためには必ず提出しなければならない書類であり、自分で書いても代理人(家族や社労士など)に代筆してもらっても、どちらでも構いません。
私の個人的な考えですが…
病歴・就労状況等申立書は、たしかに「請求者自身が、自分の病状や困っていることを自分の言葉で伝えることができる唯一の書類」です。
でも、だからといって、「障害年金の受給に賭ける熱い想い」を記載するものではありません。
客観的事実を淡々と書いていき、そのなかで病状や困りごとをアピールしていきます。
そして、審査する人が診断書を読み、たとえば「2級 or 不支給」で判断に迷ったとき、病歴・就労状況等申立書の内容から「2級」と判断されれば、その申立書は立派に役目を果たしたことになります。
一方、誰がどう読んでも「2級」と判断される診断書であれば、病歴・就労状況等申立書は必要最低限のことだけを箇条書きにでもしておけば、それで十分役目を果たしているのです。
パソコンで作成できます
病歴・就労状況等申立書は、手書きで書かなければいけないというものではありません。
人それぞれですが、パソコン操作に慣れている人は、手書きよりもパソコンの方が効率よく文章を作成できることと思います。
日本年金機構のホームページにはエクセルの様式が用意されており、ダウンロードして使用することができるようになっています。
日本年金機構のページ
冒頭部分の記入例
基本的には、一枠目に「発病から初診日までの状況」を記載し、二枠目に「初診医療機関を受診した期間の状況」を記載します(先天性疾患を除く)。
二枠目の日付は、受診状況等証明書に「初診年月日」と「終診年月日」が記載されていますので、それに合わせます。
また、「傷病名」は診断書の記載に合わせます。
「発病日」や「初診日」は年金請求書の記載と整合性がとれるようにしましょう。
困っていることが具体的に伝わるように
「できないこと」をアピールする
病歴・就労状況等申立書は、その名のとおり「病歴」と「就労状況」、あるいは「生活状況」について記載する書類です。
請求する傷病によって日常生活や就労にいかに支障があるか、何ができなくて何に困っているのか(それがつまり「障害」です)を伝えるためのものです。
「できない自分」を客観視する必要があるため、場合によっては、自ら作成する際には気分が落ち込んでしまうこともあるかもしれません。
そのようなときには、しばらく時間を置いてみたり、代筆の依頼を検討してもよいかもしれません。
具体性・客観性が大切
病歴・就労状況等申立書に必要とされるのは、具体性と客観性です。
障害年金は、書類のみの審査です。あなたのことを全く知らない人が読んだとき、困っている状況をすぐに理解できるような、具体的・客観的な記載が必要になります。
なかなか難しいことではありますが、「どのような状況でどのような支障があり、どのような援助を必要としているのか」、具体的なエピソードを交えて客観的事実として簡潔に記載するとよいでしょう。
自分で作成する場合、どうしても「わかってほしい」という思いが強く出てしまいがちです。よって、自分自身の状況を客観視する第三者的な視点が大切になります。
(例)うつ病の場合
たとえば、うつ病などの気分(感情)障害の場合、「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」には、「各等級に相当すると認められるもの」の例示として、次の記載があります。
2級
気分(感情)障害によるものにあっては、気分、意欲・行動の障害及び思考障害の病相期があり、かつ、これが持続したり又はひんぱんに繰り返したりするため、日常生活が著しい制限を受けるもの
3級
気分(感情)障害によるものにあっては、気分、意欲・行動の障害及び思考障害の病相期があり、その病状は著しくないが、これが持続したり又は繰り返し、労働が制限を受けるもの
つまり、病歴・就労状況等申立書では、うつ病特有の「気分」「意欲・行動」「思考」の障害がたくさんあって、日常生活(就労)がもうダメだということをアピールしていけばよいわけです。
うつ病特有の「気分」「意欲・行動」「思考」の障害(うつ病の症状)は、たとえば次のようなものです。これらの障害(症状)のため、日常生活や就労がかなりキツイということを具体的エピソードとともに記載していきます。
言い方を変えれば、次のような症状がひどかったときの状況を思い出し、そのときの状況・エピソードを記載していけばよいわけです。
日本年金機構のページ
自分なりのテーマを決める
病歴・就労状況等申立書を書くとき、あらかじめ自分なりのテーマを決めるのもよいかもしれません。
自分自身のこれまでを振り返り、診断書の内容と照らし合わせ、何が一番の困りごとなのかというテーマを決めます。
たとえばの話ですが、発達障害であれば「対人コミュニケーションの困難さ」をテーマとし、うつ病であれば「気分の落ち込み」をテーマとします。
そして、そのテーマを意識して記入していくことにより、一貫性のある、何に困っているのかがわかりやすい申立書が仕上がるかもしれません。
なお、テーマを決める際には、「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」を見て、それに沿って考える必要があるでしょう。自分の請求傷病ではどのような障害が重視されているのか、認定基準を見ながら考えていきます。
日本年金機構のページ
シンプルな病歴・就労状況等申立書でも大丈夫
診断書の記載内容がしっかりしており、誰が見ても審査に通ると思えるようなものであるという前提ですが、病歴・就労状況等申立書の内容はシンプルで構いません。
文字数が足りないから審査に通らないなどということは、当然ながらありません。
そもそも、診断書がしっかり記入されており、かつ、発病から障害年金の請求まで比較的短期間である場合、ほとんど書くことがないというのが実際のところだと思います。
日常生活の困りごとがしっかりと診断書に記載されていれば、あとは淡々と時系列に沿って受診状況等証明書や診断書の内容をなぞって書いていくだけです。そのなかで特に強調しておきたいことがあれば、書いておけば間違いないでしょう。
ただし、しっかりと記入されている診断書であれば、その強調したいことすらも、すでに診断書に書いてあるのです。
蛇足は避けたい
あくまで私の個人的な推測ですが、診断書で重い評価を得ている項目について、病歴・就労状況等申立書に具体的記載をしてしまったばかりに、「あっ、これってその程度なの?」と思われてしまう可能性も、場合によっては無きにしもあらずかなという気がしないでもありません。
あなたが申し立てずとも、その症状の重さは、すでに医師によって専門的に診断されているのです。
よって、場合によっては、病歴・就労状況等申立書は「シンプル・イズ・ベスト」とも言えると思うのです。
作成時の教科書的な注意点
病歴について
発病から(知的障害や発達障害は出生日から)現在までを3年~5年ごとに区切り、空白期間がないように状況を記載します。
その際、病院名や診療科名、通院頻度や入院期間、治療内容や医師の指示、服薬の内容、症状の変化などを具体的に記載するようにします。
また、転院があればその理由についても記載し、受診していない期間があれば、その理由やその間の症状・生活状況・就労状況についても具体的に記載します。
就労状況について
休職期間や復職したときの状況、上司や同僚からのサポート、配置換えや短時間勤務への変更、勤務形態の変更、退職時期…等々、傷病に関連して起こった具体的エピソードを記載していきます。
生活状況について
ただ単に「援助が必要」と書くだけではなく、どのような場面で、誰からどのような援助を受けているのか、できるだけ具体的に記載します。
病歴・就労状況等申立書に正解はない
病歴・就労状況等申立書を書くうえで一番難しいこと、それは「正解がない」ことだと思います。「こう書いてあれば完璧」、「これが書いてあれば100点」というような基準はありません。また、記入スペースにも限りがあります。
そのようななかで、いかに必要な情報を完結に記入することができるか…深く考え過ぎると、それだけで具合が悪くなってしまうかもしれません。
では、どうすれば良いのでしょうか?
どっちにしろ正解はないのですから、客観的事実を簡潔に記載していけば、それで良いのだと思います。100点満点の申立書を書く必要はありませんし、そもそも書けません。
それに、最重要書類は、あくまでも医師が作成する診断書です。