受給事例とお客様の声について

この記事の内容

当事務所のホームページには、「受給事例」や「お客様の声」が掲載されていません。

その理由のご説明です。

受給事例の違和感

①他人のデリケートな部分を公開する違和感

障害年金を受給している人には、どの人にも必ず「障害の原因となった傷病」があり、「通院歴」や「入院歴」があります。

これは、その人に関する極めてプライベートな情報であり、個人情報の最たるものと言えます。

ましてや、当事務所は精神科や心療内科で治療を受けている人の障害年金請求を専門としています。

「精神科通院歴あり」などといえば、かつては差別や偏見の対象であり、好奇の目で見られていました。

今でこそ、「メンクリ」などと呼ばれて気軽に通院できるような雰囲気がありますが、それでも精神科や心療内科に通院歴のある人とない人の間には、見えない溝があるように思えます。

どこか気軽に話題にできない、とてもデリケートな部分であり、それを積極的に発信することへの違和感があります

②良い悪いが逆転している点についての違和感

障害年金の請求は、良い悪いの方向性が世間一般の価値観とは逆方向に向いています。

通常、日常生活を送るうえでは、障害の状態が重ければ重いほど不利であり、軽ければ軽いほど有利です。

しかし、障害年金の請求においては、障害の状態が重ければ重いほど有利であり、軽ければ軽いほど不利になります。

1級の事例を見たり永久認定の事例を見たりすれば、「すごい」「うらやましい」となります。

そこに何とも言い表せない違和感があります。

③他人が誇示することへの違和感

障害年金の受給に関して、ご本人ならばともかく、他人(社労士)がそれを誇らしげに公開するという点に違和感があります。

障害年金を受給できるということは、それだけ障害の状態が重いということです。

その「この人はこれだけ障害の状態が重い」ということを積極的に発信することに抵抗があります。

④アレンジへの違和感

受給事例はあくまで匿名であり、個人が特定されることはありません。

とはいえ、ご本人の通院歴、発病の経緯、病気の経過等が公開され、発信されるということには、前述の通り違和感があります。

適度なアレンジが加えられた受給事例もあるかと思いますが、アレンジすればそれはもはやフィクションであり、フィクションを受給事例として積極的に公開することへの違和感があります。

お客様の声について

ご依頼者様から「お客様の声」をいただくには、それを書いてくれるようにお願いする必要があります。

「お客様の声」とは結局のところ「感謝の言葉」ですので、つまりは「私に感謝をしてください」というお願いです。

サービスを提供し、料金をいただき、本来はそれで十分なのですが、そのうえ「私への感謝の言葉をください」とお願いするわけです。

たしかに、医師でもないのに病気を治したり、障害の状態をなくしたりすれば、そのときは感謝の言葉を要求してもいいのかもしれません。

「障害年金の請求代行を依頼したら、社労士が病気を治してくれた…」

もしもこんな奇跡を起こせば、それは感謝されて然るべきです。

しかし、当然にやるべきことをやっただけで、その分の料金はもらっているのに、そのうえ「私に感謝し、私への感謝の言葉を書いてくださいね」とは、私は言えません。

おまけ

「受給事例」と「お客様の声」は、どちらもご依頼をいただくためにとても重要なものです。

これらを積極的に公開していくことにより、信用や信頼を得てご依頼をいただいていきます。

それは十分承知のうえで、このような記事を書いてみました。

障害年金社労士は、どこか不思議な職業です。

ご依頼者様からはとても感謝していただけますが、病気を治せるわけでも障害の状態を軽くできるわけでもありません。

受給して当然の障害年金を受給するためのお手伝いをしているだけです。

一方、その「成功報酬」が高額になりがちなことや、経済的に困窮している方にようやく支給された年金から報酬をいただくケースが多いこと等により、あまり良いイメージを持たれない面もあります。

無償あるいは低料金でサービスを提供できればよいのですが、サービスの質を担保するにはある程度の対価をいただかないわけにはいきません。

料金が発生するからこそ、真剣に打ち込むことができます。

たいした稼ぎにならないと思えば、やはり身が入りません。

なぜなら私は、平々凡々な煩悩まみれの凡人であり、俗物だからです。