精神障害者の就労支援と障害年金

精神障害者の就労支援機関・組織

障害者雇用施策は、主に「障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)」にもとづいて進められています。

その基本的な柱は、次の2つです。

  1. 事業主に対する措置としての「雇用義務制度」と「納付金制度」
  2. 障害者本人に対する措置としての「職業リハビリテーションの推進」

ここでは「2.障害者本人に対する施策(職業リハビリテーションの推進)」について、その支援機関・組織をご紹介いたします。

ハローワーク(公共職業安定所)

ハローワークは、職業安定法にもとづいて設置・運営されている国の機関です。地域での就業支援の中心的な役割を担っており、障害者や生活保護受給者などに対する支援活動を行っています。

主な活動内容は、次のようなものです。

  • 職業相談、職業紹介
  • 障害者向け求人の開拓
  • 事業所に対する雇用率達成指導
  • 関係機関との連携
  • 地域障害者就労支援事業
  • 生活保護受給者等就労自立促進事業

ハローワークインターネットサービス (mhlw.go.jp)

地域障害者職業センター

障害者雇用促進法にもとづき「独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構」が運営する「障害者職業センター」には、次の3種類の施設があります。これらのうち、ここでは各都道府県に設置されている「地域障害者職業センター」について紹介します。

地域障害者職業センターの活動内容

【障害者に対する支援】
対象者について、職業能力等の評価や相談・指導を行ったうえで、就職して職場に適応するための支援内容等を盛り込んだ「職業リハビリテーション計画」を策定します。

また、センター内での作業訓練、職業準備講習、社会生活適応訓練などを行い、事業所で必要とされる基本的な労働習慣の体得、作業遂行力の向上、コミュニケーション能力・対人対応能力の向上を図ります。さらに、模擬的場面での作業支援、職業準備講習、自立支援カリキュラム(精神障害者が対象)、就労支援カリキュラム(発達障害者が対象)を組み合わせた個別カリキュラムを作成して支援します。

【障害者・事業主に対する支援】
円滑な就職と職場適応のために、職場適応援助者(ジョブコーチ)を派遣して、障害者と事業所の双方に対して支援を行います。また、精神障害者と事業主を対象に、主治医等と連携しながら、精神障害者の新規雇い入れ、職場復帰、雇用継続などにかかわる支援を行います。その一環として、職場復帰支援(リワーク支援)があります。

【その他】
事業主に対する相談・援助や、地域の関係機関に対する助言・援助等を行っています。さらに、各関係機関と連携して、地域における就労支援ネットワークの形成を図るなどしています。

障害者就業・生活支援センター

18歳以上で精神障害者保健福祉手帳、療育手帳、身体障害者手帳のいずれかを持っており、一般就労を希望、またはすでに一般就労をしている人を対象に、就業面と生活面の支援を一体的・継続的に行います。

障害者雇用促進法にもとづいて、都道府県知事が指定する一般社団法人、一般財団法人、社会福祉法人、特定非営利活動法人等により運営されており、令和4年4月1日時点で全国に338箇所設置されています。

就業面の支援は、次のようなものです。

  • 就職に向けた相談
  • 職場実習や職業準備訓練のあっせん
  • 就職活動の支援(ハローワークへの同行等)
  • 職場定着に向けた支援
  • 障害特性を踏まえた雇用管理についての事業所への助言
  • 関係機関との連絡調整 など

生活面の支援は、次のようなものです。

  • 生活習慣の形成
  • 健康管理や金銭管理等の日常生活の自己管理に関する助言
  • 住居、年金、余暇活動など地域生活や生活設計に関する助言 など

障害者就業・生活支援センターについて|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

▶ 群馬県内は9か所です
000775156.pdf (mhlw.go.jp)

障害者職業能力開発

職業能力開発促進法にもとづいて実施されている障害者の職業能力開発には、次のものがあります。

一般の職業能力開発校

  • 一般の職業能力開発校においても障害者の入校を受け入れています
  • 一般の公共職業能力開発校における障害者対象訓練科の設置状況(令和4年度)
    → 001023077.pdf (mhlw.go.jp)

障害者職業能力開発校の設置・運営

委託訓練

  • 企業、社会福祉法人、NPO法人、民間教育訓練機関等に委託して、個々の障害の状態に応じた職業訓練を実施しています
  • 障害者の多様なニーズに対応した委託訓練の概要
    → 001066174.pdf (mhlw.go.jp)

ハロートレーニング(障害者訓練) |厚生労働省 (mhlw.go.jp)

障害福祉サービス事業所・障害者支援施設

障害者総合支援法にもとづいて、次の就労支援サービスが行われています。

  • 就労移行支援
  • 就労継続支援A型(雇用型)
  • 就労継続支援B型(非雇用型)

申請先は、市区町村です。

障害福祉サービスの内容 |厚生労働省 (mhlw.go.jp)

その他の機関

発達障害者支援センター

  • 発達障害者支援法にもとづいて設置
  • ライフステージの各段階で直面するさまざまな課題に対する総合的支援、就労支援を実施

発達障害者支援センター - 群馬県ホームページ (pref.gunma.jp)

発達障害者の就労支援 |厚生労働省 (mhlw.go.jp)

難病相談・支援センター

  • 各都道府県に設置
  • 難病患者やその家族等に対する療養上・生活上の相談
  • 各種公的手続き等の支援
  • 生活情報の提供
  • 患者会の交流
  • 就労支援活動

都道府県・指定都市難病相談支援センター一覧 – 難病情報センター (nanbyou.or.jp)

群馬県難病相談支援センター (gunma-u.ac.jp)

福祉事務所

  • 社会福祉法にもとづく機関
  • 特別の配慮を必要とする生活保護受給者、障害者、高齢者などに対する援護、育成、更生業務を実施
  • 就労支援については、「生活保護受給者等就労支援事業」や「就労支援プログラム」を実施

生活保護制度について - 群馬県ホームページ(健康福祉課) (pref.gunma.jp)

どこへ相談すればいいか分からない方へ

厚労省のページへのリンクです。

どこへ相談すればいいか分からない方へ (mhlw.go.jp)

参考リンク

障害者の方への施策 |厚生労働省 (mhlw.go.jp)

障害者の在宅就業支援ホームページ チャレンジホームオフィス|高齢・障害・求職者雇用支援機構 (jeed.go.jp)

精神障害者の就労支援施策

就労に関して、精神障害者を対象に行われている主な支援施策のご紹介です。ここでは、事業主に対する支援(助成金や奨励金)ではなく、障害当事者に対する支援について掲載しています。

精神障害者を対象とした支援施策

精神障害者に特化した就労支援のご紹介です。

職場復帰支援(リワーク支援)

精神障害者総合雇用支援」の一環で、うつ病などで休職している人がスムーズに職場復帰するための支援プログラムです。うつ病などで休職している人や、その職場復帰に向けて取り組んでいる事業主に対して、主治医等と連携して支援を行います。職場への適応に課題がある場合には、職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援等を通して職場への定着を目指します。

詳しくは、地域障害者職業センター(群馬県であればハローワーク前橋の3階)にご確認ください。

精神障害者総合雇用支援とは

精神障害のある人、および精神障害のある人を雇用しようとする(または雇用している)事業主に対して、主治医との連携のもとで、雇用促進、職場復帰、雇用継続のための専門的支援を行うものです。

▶ 精神障害者総合雇用支援とは(独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構のページ)

若年求職者・発達障害者等を対象とした支援施策

若年求職者・発達障害者等を対象とした就労支援のご紹介です。

若年コミュニケーション能力要支援者就職プログラム

ハローワークにおいて、発達障害等の要因により、コミュニケーション能力に困難を抱える若年求職者(34歳以下)に対して個別支援を行うものです。

若年求職者のうち、障害者向けの専門的な支援を希望する人に対しては、専門支援機関等への誘導を行う等、総合的な支援を行います。また、障害者向けの支援を希望しない場合であっても、就職支援ナビゲーター(ハローワークの一般相談窓口に配置)により、きめ細かな個別支援が行われます。

若年コミュニケーション能力要支援者就職プログラム(厚労省のページ)

発達障害者に対する体系的支援プログラム

地域障害者職業センター(群馬県であればハローワーク前橋の3階)で行われるものです。センター内での技能習得のための講座(8週間程度)、事業所での体験実習を通じた実践的な支援(4週間程度)、求職活動支援等を総合的に組み合わせたプログラムです。

発達障害者に対する体系的支援プログラム(厚労省のページ)

発達障害者の就労支援 |厚生労働省 (mhlw.go.jp)

障害者全体を対象にした支援施策

障害の種類に関係なく、すべての障害者を対象とした支援施策には次のようなものがあります。

個別支援

ハローワーク
ハローワークでは、専門の職員が、個々の障害者に応じた職業相談や職業紹介、職域の開拓、職場適応のための指導などを行っています。また、福祉・教育等の関係機関と連携し、就職の準備段階から職場定着まで一貫した支援を実施しています。

地域障害者職業センター
地域障害者職業センターでは、職業評価、職業準備の支援、職場適応の支援など、一貫した職業リハビリテーションサービスを個別に行っています。

職場適応訓練

都道府県知事または都道府県労働局長が民間事業主等に委託して、雇用を前提とした職場適応訓練行っています。窓口はハローワークです。訓練期間は6か月以内(重度障害者は1年以内)で、事業主には訓練費、訓練生には訓練手当が支給されます。訓練終了後は、同事業所に雇用されます。

なお、雇用を前提とせず、職場体験を目的とした「短期職場適応訓練(職場実習)」もあります(2週間以内、重度障害者の場合には4週間以内)。

職場適応援助者(ジョブコーチ)支援事業

障害者が職場に適応しやすくするため、ジョブコーチが職場に出向いて、障害特性に応じた専門的な支援を行います。また、障害者本人だけでなく、事業所や障害者の家族も支援の対象とし、事業所の上司や同僚による支援(ナチュラルサポート)にスムーズに移行することを目指します。なお、ジョブコーチには、配置型、訪問型、企業在籍型の3種類があり、いずれも指定の養成研修を終了した有資格者です。

  • 配置型:地域障害者職業センターに所属
  • 訪問型:障害者の就労支援を行う社会福祉法人等に雇用されている
  • 企業在籍型:障害者を雇用する企業に雇用されている

職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援|高齢・障害・求職者雇用支援機構 (jeed.go.jp)

委託訓練事業

都道府県の職業能力開発校が、地域の企業、社会福祉法人、民間教育機関などに委託して行う公共職業訓練です。個々の障害特性や、就職に必要な知識・技能に応じて、多様な訓練プログラムが用意されています。なお、標準的な訓練期間は3か月です。

ハロートレーニング(障害者訓練) |厚生労働省 (mhlw.go.jp)

福祉分野の就労支援

障害者総合支援法にもとづき行われる「就労移行支援事業」、「就労継続支援事業A型(雇用型)」、「就労継続支援事業B型(非雇用型)」です。申請先は、市区町村です。

障害福祉サービスの内容 |厚生労働省 (mhlw.go.jp)

どこへ相談すればいいか分からない方へ

厚労省のページへのリンクです。

どこへ相談すればいいか分からない方へ (mhlw.go.jp)

精神障害者の福祉的就労

障害者総合支援法の訓練等給付には、次の3種類の就労支援サービスがあります。

  • 就労移行支援
  • 就労継続支援A型(雇用型)
  • 就労継続支援B型(非雇用型)

この記事では、この3種類のサービスについて、その概要をご紹介します。

※上記3種類のサービスは、すべての障害者が対象です。精神障害者だけが対象となるわけではありません。

就労移行支援

目的

企業などへの雇用、または在宅就労などに結びつけることです。

対象者

就労を希望する65歳未満(※)の障害のある人で、通常の事業所に雇用されることが可能と見込まれる人です。たとえば、次のような人が対象となります。

  • 単独で就労することが困難なため、知識や技術の習得、就労先の紹介などの支援が必要な人
  • あん摩マッサージ指圧師免許、はり師免許、または、きゅう師免許を取得し、就労を希望する人
  • 特別支援学校の卒業生で、企業等に雇用されるための準備訓練をする人
  • 雇用された後に何らかの理由で離職したため、再訓練をして再就職を目指す人
  • 施設を退所した後に、雇用を目指して準備訓練を行ったり、職業能力の向上を図っている人

※65歳以上の人については、65歳に達する前5年間(入院その他やむを得ない事由により障害福祉サービスに係る支給決定を受けていなかった期間を除く。)に引き続き障害福祉サービスに係る支給決定を受けていた人であって、65歳に達する前日において就労移行支援に係る支給決定を受けていた人に限り対象となります。

支援内容

一定期間の計画的なプログラムにもとづいて、事業所内や企業における作業・実習を行います。また、適性に合った職場探しや、就労後の職場定着のための支援などを行います。

期間

利用者ごとに、標準機間(おおむね2年)内で利用期間が設定されます。

就労継続支援A型(雇用型)

目的

一般企業での雇用に結びつかなかった人に働く場を提供し、体力や能力の向上を図ることを目的としています。

対象者

一般企業等に就労することが難しい人で、雇用契約にもとづいて継続的に就労することが可能な人です。年齢制限があり、65歳未満(※)の人が対象です。たとえば、次のような人が対象になります。

  • 就労移行支援事業を利用したものの、企業等の雇用に結びつかなかった人
  • 特別支援学校を卒業して就職活動を行ったものの、企業等の雇用に結びつかなかった人
  • 企業等に雇用されていたものの、体力や能力低下等の理由で離職した人で、働く場を通して能力の向上を図る人
  • 施設を退所した後に雇用を目指しているものの、そのための体力や職業能力が不足しており、働く場を通して能力の向上を図る人

※65歳以上の人については、65歳に達する前5年間(入院その他やむを得ない事由により障害福祉サービスに係る支給決定を受けていなかった期間を除く。)に引き続き障害福祉サービスに係る支給決定を受けていた人であって、65歳に達する前日において就労継続支援A型に係る支給決定を受けていた人に限り対象となります。

支援内容

原則として雇用契約を結び、知識や能力の向上を図り、働き続けられるような場を提供します。

期間

利用期間の制限はありません。

就労継続支援B型(非雇用型)

目的

雇用契約を結ばない形態での働く場を提供します。また、さまざまな生産的な活動をする機会を提供します。

対象者

一般企業等に就労することが難しい人で、雇用契約にもとづいて継続的に就労することが困難な人です。年齢制限はありません。たとえば、次のような人が対象になります。

  • 就労経験がある人で、年齢的・体力的に一般企業に雇用されることが難しくなった人
  • 50歳に達している人、または障害基礎年金1級受給者
  • 上記2点に該当しない人で、就労移行支援事業者等によるアセスメントにより、就労面に係る課題等の整理が行われている人

支援内容

雇用契約は結ばずに、障害や病気の特性に配慮しながら、生産活動を支援します。また、生きがいや働きがい、人とのつながりを大切にしたいというニーズにも応えます。

期間

利用期間の制限はありません。

どこへ相談すればいいか分からない方へ

厚労省のページへのリンクです。

どこへ相談すればいいか分からない方へ (mhlw.go.jp)

理想としての「就労と障害年金」

ここまで、障害のある人の就労支援について見てきました。最後に、その理想像について思うところを記してみます。

仕事をしつつ受給する

病状の程度・障害の程度によりますが、就労が可能なのであれば、「無理のない範囲で仕事をし、収入を得て、不足分を障害年金で補う」というのが、ひとつの理想形です。

働いて収入を得られるということは、社会とのつながりを実感できるということでもあり、自己肯定感・精神的な安定に大きく寄与するものです。「働けるのであれば働く」ということが、生活を充実させて豊かにする一番手っ取り早い方法なのです。

本末転倒にならないように

それにもかかわらず、「働いていたら障害年金は受給できない」という強いイメージが先行し、頑張って何とか働いている人が請求しないこと、あるいは、請求するためにせっかく頑張ってきた仕事を辞めてしまうこと、これらはとてももったいないことです。

また、障害年金を請求せずに無理に働き、それによって体調をさらに悪化させてしまったり、あるいは、頑張って勤めてきた会社を障害年金請求のために辞めてしまい、それゆえ周囲から取り残されたような感覚に陥ってしまったり、これでは本末転倒です。

このようなことを防ぐためにも、頑張って就労している人が躊躇なく請求できるように、あるいは、受給している人が躊躇なく就職できるように、障害年金の本来あるべき姿を実現させていく必要があるのです。

支給されるされないは別として、請求するかしないかは個人の自由です。生活や就労に支障があり、お困りであれば、ぜひお気軽にご相談ください。一緒に可能性を探っていきましょう。