精神障害・発達障害での障害年金申請、何が難しいの?

この記事の内容

インターネットで情報収集をしていると、「障害年金は難しい」という記載をよく目にするかと思います。

その言葉の意味するところは、「障害年金の申請手続きは複雑で難しく、自分でやろうとすると不支給になりやすい。だから、専門家(社労士)に依頼しましょう」ということです。

たしかに、障害年金の申請手続きは複雑で難しいかもしれません(ケースによります)。

では、いったい何がそんなに難しいのでしょうか?

この記事では、障害年金の申請が複雑で難しいと言われるその理由について考えてみました。

結論としては、「手続きそのものは難しいものではないものの、それをスムーズに進め、書類提出までこぎつけることが難しい」ということになります。

難点①:年金の納付要件を満たしているか?

基本的に障害年金は「保険」ですので、年金保険料をきちんと納めている必要があります(初診日が20歳前にある場合を除く)。

具体的には、「初診日の前日」時点での納付状況が問われるわけですが、皆が皆きちんと年金を納めているとは限りません。

ついうっかり未納の期間があるという場合もあるでしょうし、経済的な厳しさからどうしても納められなかったという場合もあるでしょう。

どれほど重い障害の状態にあったとしても、初診日の前日において納付要件を満たしていなければ、1円たりとも支給されないというのが障害年金制度です。

たとえば、「年金を未納のまま過ごしてきた最重度の障害状態にあるAさん」と、「年金をきちんと納めてきた認定基準ぎりぎりの障害状態にあるBさん」がいたとします。年金を受給できるのはどちらの人でしょうか?

この場合、障害の状態の重い軽いに関係なく、Aさんは受給できず、Bさんは受給できます。

また、仮にAさんの年金納付が「たったひと月分足りないだけ」だったとしても、もらえないものはもらえません。どれほど障害の状態が重くてもです。

この点で、障害年金は「厳しい」「難しい」と言えるでしょう。

納付が難しければ、免除申請をしよう

年金保険料の納付について、自営業者や学生が加入する国民年金には、納付の免除(猶予)制度があります(会社員などが加入する厚生年金は、給与から天引きされるため関係ありません)。

何らかの理由により国民年金を納付することが難しくなった場合、年金事務所や市役所等で免除申請をすれば、納付免除になる可能性があります。

「免除」と「未納」は似て非なるもので、「免除」は障害年金の受給資格期間に反映されるものの、「未納」は反映されません。

障害基礎年金、
遺族基礎年金の
受給資格期間への算入
納付あり
全額免除あり
一部納付(※)あり
納付猶予
学生納付特例
あり
未納なし
※一部納付の承認を受けている期間については、一部納付の保険料を納付していることが必要です。
【日本年金機構のwebページから抜粋】

「未納」も「免除」も同じようなものだと思って免除の手続きを怠ると、障害年金や遺族年金を申請する際、そのスタートラインに立つことすらできないことになってしまいます。

たった1か月の納付/未納が、後の支給/不支給を決定づけるのです。1年に約80万円支給されるとして、10年で800万円、20年で1,600万円という額が、たった1か月の未納でもらえないというも、十分あり得ることなのです。

納付が難しければ、いざというときのため、必ず免除申請をするようにしましょう

難点②:初診日を証明できるのか?

障害年金を申請するうえで、最初にして最大の関門といえるのが「初診日」です。これがはっきりしないことには、それより先に進むことができません。

上記「難点①」で年金保険料の納付要件に触れましたが、それを確認する際の基準となるのが、この「初診日」です。

そして、初診日は、記憶をたどってただ思い出せばよいというものではなく、一般的には「○年○月○日」と客観的に証明する必要があります。そのための証明書類は、通院をやめてから5年以内であれば、受診の記録が医療機関に保存されているため、入手は容易です。

しかし、障害の原因となった傷病で初めて医療機関を受診した日から10年20年とたってしまい、すでに受診の記録が医療機関に残っていない場合、あるいは、その医療機関自体がすでに廃院となってしまっているような場合、「初診日の証明」は途端に難易度が上がります。

10年前20年前の受診に関する、日付入りの領収書や明細書が手元に残されていれば…等々、初診日を証明する方法はあるわけですが、なかなかそう上手い具合にはいかないというのが実際のところではないでしょうか?

たとえば、とても重い障害の状態にあり、年金をすべてきちんと納めてきた人であっても、この初診日だけがどうしても証明できない、何一つとして手掛かりがないという場合、障害年金をもらうことはできません。

この点で、障害年金は「厳しい」「難しい」と言えるでしょう。

初診日から1年6か月後が障害認定日

例外はあるものの、基本的には、初診日から1年6か月後が「障害認定日」です。この認定日の時点における障害の状態が認定基準に該当すれば、障害の状態に関する要件はクリアです。

一般的には、年月が過ぎれば過ぎるほど、初診日の証明は難しいものとなっていきます。1年6か月きちんと治療し、それでも障害が残ってしまえば、早めに障害年金について検討してみるのがよいのではないでしょうか。

難点③:手続きを完遂できるのか?

精神障害(発達障害)で障害年金を申請する場合、「手続きの最初から最後まで自分でやり遂げることができるだろうか」という問題があります。

たとえば、一般的に2級の認定基準に該当するような人は、気分の落ち込みや障害特性などにより、炊事や掃除といった家事を自分でこなすことができず、社会生活に必要な手続き等も自分一人だけでは難しいというような状態です。

もちろん、家族等が代わりに手続きをすればそれでよいのですが、事情によりそれも難しいというような場合、「手続きを進める」こと自体が高いハードルとして立ちはだかることになります。

障害年金は、「うつ病という診断名がついた」「発達障害の傾向があると言われた」というだけで支給されるものではありません。それによる障害の状態が、治療を受けてなお、「日常生活が著しい制限を受ける」(2級)、「労働が著しい制限を受ける」(3級)というような状態でなければ、支給されません。

そのような状態にある人が、果たして自分で申請手続きを最後までやり遂げられるのか…この点で、障害年金は「厳しい」「難しい」と言えるでしょう。

まとめ

障害年金の申請について、年金をきちんと納付してきて、初診日を簡単に証明できる人であれば、その手続き自体は難しいものではありません。

ただし、病気の症状や障害によって手続きをする気力がない、あるいは、手続きを進めること自体が困難という人にとっては、やはり難しいものとなります。

もしも近くに頼れる人がいなければ、お金はかかってしまいますが、社労士へ申請代行を依頼するのも一つの方法です。社労士へ料金を支払ったとしても、長い目で見れば、当然、受給しないよりはした方が、懐(ふところ)が暖まるに決まっています。

まずは、なんとなく良さそうな社労士事務所に、問い合わせをしてみてはいかがでしょうか?