決定に納得できないとき
数か月かけて必要な書類を準備し、ようやく障害年金を請求できたとしても、ときに希望どおりの結果にならないこともあります。考えていたよりも下位の等級で支給が決定される場合もあれば、不支給や却下とされる場合もあります。
そのようなとき、社会保険審査官や社会保険審査会に対して、不服を申し立てることができます。
不支給や却下の理由を確認
障害年金を請求し、不支給や却下となってしまったとき、その通知書には理由が記載されています。その理由は大きく分けて2つあり、「初診日が確認できなかった」と「障害等級に該当しなかった」です。
「初診日が確認できなかった」場合、以下のような状況が考えられます。
- 提出書類の内容から初診日を確認することができなかった
- 請求した傷病と初診日の症状に相当因果関係がなかった
- 初診日において納付要件を満たしておらず、あるいは、被保険者要件を満たしていなかった
これらに該当する場合、障害等級については審査されません。
審査には順番がある
障害年金の審査は、まず初診日、次に障害等級という順番で行われます。つまり、初診日についての審査をクリアしないことには、障害等級の審査には駒を進めることができないのです。
そのため、「初診日が確認できなかった」という理由が記載されていた場合には、障害等級の審査は行われていないことになります。逆に言えば、「障害等級に該当しなかった」という理由が記載されていたときは、少なくとも初診日要件はクリアしていたということです。
何についての不服なのか
不服申立においては、そもそも何についての不服を申し立てるのかを明確にする必要があります。
「初診日が確認できなかった」場合であれば、初診日と障害等級の両方について不服を申し立てることになり、「障害等級に該当しなかった」場合であれば、障害等級についてのみ不服を申し立てることになるのです。
審査請求
障害年金の不服申立は2審制であり、まず行うのが社会保険審査官に対して行う「審査請求」です。
社会保険審査官は、厚生労働省の職員のうちから厚生労働大臣によって任命され、各地方厚生局に置かれています。
審査請求を行うためには、不支給等の結果を知った日の翌日から起算して3か月以内に行う必要があり、うっかりその期間を過ぎてしまうと、もはや不服を申し立てることができません。
不服を申し立ててから結果が判明するまでは、審査請求書を提出してから概ね3か月~6か月ほど要します。
再審査請求
審査請求の結果に不服がある場合には、社会保険審査会への「再審査請求」を行うことができます。
社会保険審査会は、厚生労働省に置かれており、学識経験者のうちから衆参両議院の同意を得て厚生労働大臣によって任命された委員長及び委員5人をもって組織されています。
再審査請求は、審査請求の決定書の謄本が送付された日の翌日から起算して2か月以内に行う必要があります。
再審査請求の結果が判明するには、およそ2か月~1年ほど要し、こちらも長い期間待たなければなりません。
審査請求・再審査請求で準備するもの
審査請求・再審査請求で準備するものは、(再)審査請求書や主張の根拠となる客観的資料などです。
(再)審査請求書には「(再)審査請求の趣旨及び理由」の記入欄があり、不服申立の理由や、社会保険審査官・社会保険審査会にどのような決定をしてもらいたいかを具体的に記載します。
審査請求・再審査請求においては、この「(再)審査請求の趣旨及び理由」欄の記載が最も重要なものになります。根拠を示し、論理的に記載することが求められます。
また、客観的資料としては、お薬手帳やカルテのほか、医師など専門家の意見書、医学書や医学論文、過去の同様の不服申立の例や判例などが必要となることもあります。
さらに、就労していたために不支給となったような場合は、出勤簿、勤務表、労働契約書、給与明細、上司の意見書などを提出することもあります。
行政訴訟
再審査請求の結果に不服がある場合、地方裁判所に提訴することができます。この提訴は、再審査請求を経ずとも行うことが可能ですが、審査請求を経ていなければ行うことはできません。
提訴を行う場合、審査請求や再審査請求の結果を知った日から6か月以内に行うものとされています。
なお、社会保険労務士は、審査請求や再審査請求では代理人になることが可能ですが、訴訟では代理人となることはできません。訴訟の場合は弁護士に依頼することになります。
最初の請求をしっかりと
実際には、審査請求や再審査請求で結果がくつがえるケースはごくわずかであり、最初の裁定請求をいかにしっかりと行うかが重要です。
とはいえ、実際にくつがえるケースもあるのですから、請求すべきものはきちんと請求するという気構えも必要になります。