20歳前に初診日があるとき
通常ですと、障害基礎年金を受給するためには保険料納付要件を満たす必要があります。ですが、就労して厚生年金の被保険者になっている場合を別にすると、国民年金に加入して保険料を納付するのは20歳になってからです。そのため、初診日の時点で20歳未満であった場合には、当然保険料を納付することができず、障害基礎年金の請求ができないことになります。
そこで、そのような場合には、福祉的な意味合いで障害基礎年金を受給できることとされており、それが「20歳前傷病による障害基礎年金」です。20歳前に初診日があるときは、保険料納付要件を問われずに、障害基礎年金を受給することができるのです。
なお、初診日が20歳前であっても、すでに就職等しており、厚生年金の被保険者となっている場合には、障害厚生年金を通常どおり請求することとなります。20歳前傷病による障害基礎年金のルールは適用されません。
障害認定日はいつ?
次のうちどちらか遅い方が、障害認定日となります。
- 初診日から1年6か月後
- 20歳に達した日(20歳の誕生日の前日)
遡及請求できる?
できます。
通常の障害年金と同様、障害認定日の時点で障害の状態が障害等級に該当しており、診断書を取得できる等の条件を満たしていれば、遡及請求も可能です。
事後重症請求できる?
できます。
障害認定日において障害等級に該当する障害の状態になくても、65歳に達する日の前日までの間に障害等級に該当する状態となれば、請求することができます。
つまり、初診日が20歳前であれば、その後たとえば30歳で障害等級に該当することになったとしても、保険料納付要件を問われずに請求することができるのです。
初診日の証明が簡素化される場合があります
障害の原因となった傷病で20歳前に医療機関を受診していたことを確認できれば、必ずしも「初めて受診した日」を証明しなくてもよい場合があります。
次の①②の条件を満たした場合に、初診日の証明が簡素化されます
①2番目以降に受診した医療機関の受診日から、「障害認定日」が20歳に達した日以前であることが確認できる場合(具体的には、次のいずれかを満たす場合)
- 2番目以降に受診した医療機関の受診日が、18歳6か月前である場合
- 2番目以降に受診した医療機関の受診日が、18歳6か月〜20歳に達した日以前にあり、20歳に達した日以前に、その障害の原因となった傷病が治った(症状が固定した)場合
②その受診日前に厚生年金の加入期間がない場合
病歴・就労状況等申立書も簡素化できる
また、初診日の証明を簡素化できるときは、病歴・就労状況等申立書の記載についても簡素化できることとされています。具体的には、発病から証明書発行医療機関の受診日までの経過をまとめて一つの欄に記入することが可能になります。
いつの診断書が必要?
20歳前に初診日がある場合は、障害認定日の「前後」3か月以内の現症日の診断書を取得することとなります。
通常、障害認定日から3か月以内に医療機関を受診している必要があるところ、障害認定日を挟んで6か月の間に受診していればよいため、要件が緩和されているということになります。
なお、初診日が20歳前で、障害認定日が20歳以降となる場合でも、障害認定日の「前後」3か月以内の現症日の診断書を取得します。
具体的には…
【平成10年5月21日生まれで、20歳到達日(誕生日の前日)が平成30年5月20日の場合】
(例1)
初診日:平成15年4月10日
障害認定日:平成30年5月20日(20歳到達日)
障害認定日の前後3か月以内:平成30年2月21~平成30年8月19日
(例2)
初診日:平成29年7月15日
障害認定日:平成31年1月15日
障害認定日の前後3か月以内:平成30年10月16日~平成31年4月14日
参考リンク
所得制限があります
20歳前傷病の場合、上記のように要件が緩和されている部分もありますが、保険料を納めずに受給できるという特性から、逆に厳しくなっている部分もあります。
そのひとつが所得制限で、前年の「本人の」所得額により、2分の1支給停止、または全額支給停止となる場合があります。この場合、条件とされるのはあくまで「本人の所得」であり、世帯所得ではありません。
ただ、所得制限があるというものの、条件はそれほど厳しいものではありません。例えば扶養家族がいない場合、全額支給停止となるのは前年の本人所得額が472万1000円を超える場合であり、2分の1支給停止となるのは同様に370万4001円~472万1000円とされています。つまり、前年の本人所得が370万4000円以下であれば、全額が支給されるということです。
なお、通常の障害年金には所得制限はありません。
※本人所得の限度額は令和5年4月1日時点
国内居住要件があります
海外に居住すると支給停止となります。これも通常の障害年金にはない要件ですが、20歳前傷病の場合には規定されています。ただ、あくまで「支給停止」であるため、再度国内に居住することになれば、また支給されることとなります。
これは上記の所得制限の場合も同様で、一度支給停止となったとしても、制限事由に該当しなくなれば、所定の手続きを経て支給再開となるものです。
労災保険の年金給付を受給した場合は支給停止
労災保険の年金給付と20歳前傷病による障害基礎年金が両方とも支給される場合、それが同じ病気やケガによるものでなくとも、労災が全額支給され、20歳前傷病による障害基礎年金は支給停止となります。
なお、通常の障害年金であれば、同一事由の場合に限り併給の調整が行われ、障害年金は全額支給、労災が減額支給となります。
知的障害の初診日は?
生まれつきの知的障害の場合は、生年月日が初診日とされます。そのため、初診日を証明する書類である受診状況等証明書の提出も不要です。
なお、他の先天性疾患や発達障害については、障害の原因となった傷病で初めて医療機関を受診した日が初診日とされ、受診状況等証明書などを提出する必要があります。
病歴・就労状況等申立書も簡素化できる
また、生まれつきの知的障害の場合は、病歴・就労状況等申立書の記入についても簡素化できるとされています。通常、発病時から現在までの「病歴」、「就労状況」、「日常生活の支障」について3~5年ごとに区切って記載していきますが、これを出生時から現在までまとめて一つの欄に記載してよいとされています。