初診日はずらせるか?
初診日を恣意的にずらすことはできません。
ですが、簡単ではありませんが、ずらすことが認められる場合があります。
それが「社会的治癒」です。
社会的治癒とは
症状が安定して通院や服薬の必要がなく、また自覚症状や他覚症状にも異常がなく、生活や就労が支障なくできている期間があれば、それは「社会的治癒」の可能性があります。
簡単に言えば、一旦は良くなった病気が、ある程度の期間が経過した後に再発した場合、再発時の最初の受診日を「初診日」とすることができるということです。(本来であれば、同じ病気なので、一旦良くなる前に初めて受診した日が初診日です。)
そして、この社会的治癒に該当するかどうかは、一律の規定があるわけではありません。
請求者側から社会的治癒を主張した場合に、診断書や病歴・就労状況等申立書などの内容によって、個別に判断されます。
社会的治癒のメリット
社会的治癒のメリットは、初診日を後ろにずらせることです。
たとえば、30歳の初診日時点で保険料の納付要件を満たしていない人が、その後治療が功を奏し、35歳で治療を一旦終了したとします。そして就職し、40歳で再び治療が必要になるまでの5年間、会社員(厚生年金の被保険者)としてフルタイム勤務をしていた場合はどうでしょうか。
この場合、初診日が30歳であれば、納付要件を満たしていないために障害年金を請求することができません。
しかし、5年間のフルタイム勤務期間から社会的治癒が認められ、初診日が40歳となれば、直近1年間の納付要件を当然満たすことができ、障害厚生年金を請求することができるようになります。
どのくらいの期間がたてば社会的治癒なのか
場合によってはメリットの大きい社会的治癒ですが、どれくらいの期間が経過すれば認められるのでしょうか。
これに関しては、明確な規定があるわけではありません。傷病の種類や個々の状況によって、個別に判断されることになります。
つまり、支障なく社会生活を送れていた期間が3年で認められるケースもあれば、10年でも認められないケースもあるということです。
社会的治癒に該当しない場合
社会的治癒は、一定期間通院や服薬の必要がなく、特に支障なく社会生活が送れている状態のことです。
そのため、社会生活を送れていても、通院を続けて治療を受けていれば、社会的治癒には該当しません。
ただし、年に一回程度の経過観察目的での通院や、予防目的の服薬であれば、社会的治癒に該当することもあります。(社会的治癒は、医学的な完治とは異なるものです。)
なお、医師の指示によらず、自己判断で通院や服薬をやめてしまった場合には、社会的治癒とは認められません。
発達障害の社会的治癒について思うこと
以下、成人後に発達障害と診断された場合(いわゆる「大人の発達障害」の場合)を想定して、社会的治癒について考えてみます。
この場合の社会的治癒について、私としては、主張するのが難しいと感じます。
というのは、あくまで私個人の考えですが、発達障害で障害年金を請求する際、「幼少期から現在までの困難の継続性・一貫性」をアピールするようにしているからです。
つまり、「診断されたのは最近だけど、昔から発達障害らしい困難がこれだけ続いていましたよ」という「発達障害らしさ」をアピールするようにしているわけです。
それが、仮に社会的治癒を主張するとなると、「一定期間まったく何の問題もなかったこと」を積極的にアピールすることになります。
そうなると、「発達障害らしさをアピールした方がよいのか、それともしない方がよいのか、よくわからない」という中途半端な状態になってしまい、どこか矛盾が生じます。
以上のような理由から、あくまで私個人の考えとしては、難しいのではなかろうかと思うわけです。