認定が困難な4疾患とは

これは、化学物質過敏症線維筋痛症脳脊髄液減少症慢性疲労症候群の4疾患です。

この4疾患ついては、等級認定が困難なものと位置づけられ、診断書の記載例や認定事例等が、日本年金機構のWebサイトに掲載されています

化学物質過敏症

症状や特徴

化学物質への曝露(ばくろ)が個人の許容量を超えたとき、その後の原因化学物質への微量曝露で体調変調をきたし、化学物質に対し過敏状態となることがある疾患です。

体調変調の例としては、免疫障害、自律神経障害、精神障害、臓器障害などのアレルギー疾患があります。具体的には、頭痛、筋肉痛、倦怠感、関節痛、皮膚炎、のどの痛み、微熱、腹痛、思考力の低下、感覚異常などの様々な症状がみられます。

主に使用する診断書

主に使用するのは、「血液・造血器・その他の障害用の診断書(様式第120号の7)」です。

等級認定の要素

「一般状態区分表」+「自覚症状・他覚所見」などにより認定されます。

照会様式

診断書とともに提出が必要な「照会様式」があります。これは、診断書の現症日時点の状況を主治医に記入してもらい、診断書と一緒に提出するものです。

▶ 化学物質過敏症 照会様式

線維筋痛症

症状や特徴

主症状は、全身の強い痛み(疼痛)です。副症状として、精神神経症状(不眠やうつ病など)、自律神経の症状(過敏性腸症候群など)がみられます。

原因は不明で、あらゆる検査でほとんど異常が認められません。長期間に渡る強い痛みのため、生活の質(QOL)が著しく低下します。

主に使用する診断書

主に使用するのは、「肢体の障害用の診断書(様式第120号の3)」です。

等級認定の要素

「重症度分類試案(ステージ)」+「日常生活動作」+「補助器具の使用状況」などにより認定されます。

重症度分類試案

線維筋痛症の重症度分類試案(厚生労働省研究班)

ステージⅠ米国リウマチ学会診断基準の 18 カ所の圧痛点のうち 11 カ所以上で痛みがあるが、日常生活に重大な影響を及ぼさない。
ステージⅡ手足の指など末端部に痛みが広がり、不眠、不安感、うつ状態が続く。日常生活が困難。
ステージⅢ激しい痛みが持続し、爪や髪への刺激、温度・湿度変化など軽微な刺激で激しい痛みが全身に広がる。自力での生活は困難。
ステージⅣ痛みのため自力で体を動かせず、ほとんど寝たきりの状態に陥る。自分の体重による痛みで、長時間同じ姿勢で寝たり座ったりできない。
ステージⅤ激しい全身の痛みとともに、膀胱や直腸の障害、口の渇き、目の乾燥、尿路感染など全身に症状が出る。普通の日常生活は不可能。

脳脊髄液減少症(脳脊髄液漏出症)

症状や特徴

脳脊髄液減少症は、頭部への強い衝撃(交通事故や転倒)などにより脳や髄液を覆う硬膜に穴が開き、脳脊髄液(髄液)が持続的ないし断続的に漏出・減少するものです。

症状としては、頭痛、頚部痛、めまい、耳鳴り、視機能障害、倦怠・易疲労感などがあります。この頭痛やめまいなどの症状は、座位や起立位の状態で強く現れ、臥位(寝た状態)で軽減します。

主に使用する診断書

主に使用するのは、「肢体の障害用の診断書(様式第120号の3)」や「血液・造血器・その他の障害用の診断書(様式第120号の7)」です。

等級認定の要素

「一般状態区分表」+「自覚症状・他覚所見」などにより認定されます。

脳脊髄液減少症の初診日

令和元年12月18日に厚生労働省の事務連絡が発出され、交通事故等により脳脊髄液減少症が発症したと申し立てをした場合、診断書、受診状況等証明書、交通事故証明書等提出書類の審査を通して請求者の申し立てした日(交通事故等の日)を初診日とする取り扱いが明確化されました。

慢性疲労症候群

症状や特徴

これは、急激に始まる原因不明の全身倦怠感です。十分な休養を取っても回復せず、疲労を中心に、微熱、のどの痛み、リンパ節の腫れ、筋力低下、頭痛、精神神経症状などが長期間に渡り続き、日常生活に支障をきたします。

主に使用する診断書

主に使用するのは、「血液・造血器・その他の障害用の診断書(様式第120号の7)」です。

等級認定の要素

「重症度分類(PS値)」+「一般状態区分表」などにより認定されます。

重症度分類(PS値)

PS(=Performance status(パフォーマンス・ステータス))

PS 0倦怠感がなく平常の社会(学校)生活ができ、制限を受けることなく行動できる。
PS 1通常の社会(学校)生活ができ、労働(勉強)も可能であるが、疲労感を感ずるときがしばしばある。
PS 2通常の社会(学校)生活ができ、労働(勉強)も可能であるが、全身倦怠感のため、しばしば休息が必要である。
PS 3全身倦怠感のため、月に数日は社会(学校)生活や労働(勉強)ができず、自宅にて休養が必要である。
PS 4全倦怠感のため、週に数日は社会(学校)生活や労働(勉強)ができず、自宅にて休養が必要である。
PS 5通常の社会(学校)生活や労働(勉強)は困難である。軽作業は可能であるが、週のうち数日は自宅にて休息が必要である。
PS 6調子のよい日には軽作業は可能であるが週のうち50%以上は自宅にて休息が必要である。
PS 7身の回りのことはでき、介助も不要であるが、通常の社会(学校)生活や軽労働(勉強)は不可能である。
PS 8身の回りのある程度のことはできるが、しばしば介助がいり、日中の50%以上は就床している。
PS 9身の回りのこともできず、常に介助がいり、終日就床を必要としている。