国民年金と厚生年金
日本の公的年金制度には、国民年金と厚生年金の2種類があります。
20歳になったらすべての人が加入するのが国民年金で、主に会社員や公務員が加入するのが厚生年金です。
これは、どちらか一方だけに加入するというものではありません。
学生や自営業者などは国民年金のみの加入になりますが、会社員などで厚生年金に加入している人は、同時に国民年金にも加入していることになります。
全員もれなく加入する国民年金が基礎(1階部分)としてあり、会社員や公務員はそれへの上乗せ(2階部分)として厚生年金にも加入するという2階建ての制度です。
そして、どちらの年金制度にも老齢年金、障害年金、遺族年金という3つの柱があり、高齢者に支給されるのが「老齢年金」、家計の支え手が亡くなってしまったとき、残された家族のために支給されるのが「遺族年金」です。
障害年金
現役世代の所得補償
障害年金は、けがや病気などによって生活や仕事が長期に渡って制限される状態となってしまったとき、主に現役世代の所得補償として、請求にもとづいて支給されるものです。
なお、ここでいう現役世代とは、20歳~64歳までの人のことです。65歳になると老齢年金が受給できるようになるため、このような区分けとなっています。
受給者は増加傾向
障害年金の受給者数は、近年右肩上がりの増加傾向が続いています。これは、主に制度の周知が進んでいることによるもののようです。
【国民年金 受給権者数の推移(単位:万人)】
障害年金 | 老齢年金 | 遺族年金 | |
平成29年度 | 206 | 3,225 | 24 |
平成30年度 | 209 | 3,266 | 23 |
令和元年度 | 212 | 3,299 | 23 |
令和2年度 | 216 | 3,328 | 23 |
令和3年度 | 220 | 3,343 | 22 |
では、どのような種類の障害で受給している人が多いのでしょうか。
精神障害・知的障害が多い
日本年金機構の「障害年金業務統計」によれば、令和3年度の診断書種類別支給件数(新規裁定)は、精神障害・知的障害の占める割合が全体の66.1%となっています。
さらに、制度別に見てみると、厚生年金では44.2%、国民年金では、実に79.4%が精神障害・知的障害となっています。
うつ病などの精神疾患が広く世間に認知されるようになり、精神科や心療内科を受診することへの心理的ハードルが下がったことなどが反映されているのかもしれません。
障害年金を必要とする方々の生活の安定と心の安定のために、この制度がより一層活用されることを望みます。
知名度はまだまだ低い
徐々に周知が進んでいるとはいえ、障害年金の知名度は、まだまだ低いのが現状です。
年金といえば一般的には老齢年金であり、障害年金を思い浮かべる人はほとんどいないでしょう。
この制度が今まで以上に活用されるためには、より多くの方々に知ってもらう必要があるのです。
制度は使うためのもの
いざというとき、「生活の安定」や「心の安定」のために使える国の保険、それが障害年金です。
そして、制度は活用するためにあるもの、保険は請求するために掛けているものです。
障害年金は、自らの請求の意思が大切です。
何もせずとも案内通知が届いたり、誰かが気を利かせて手続きをしてくれたりというようなことはありません。
制度を知り、正しく請求し、十分に活用していきましょう。