障害の併合とは?

障害年金の受給権者に、さらに障害年金を支給すべき事由が生じた場合、「併合」、「初めて2級」、「併合改定」の3つの手法で処理が行われます。

併合とは、1級・2級の障害年金の受給権者に、さらに1級・2級の障害年金を支給すべき事由が生じたときの処理方法です。

初めて2級とは、もともとの傷病で2級以上に該当しない程度の障害状態にある人が、新たな傷病によりさらに障害状態となり、65歳までにその2つをあわせて「初めて」2級以上の障害状態となった場合の請求方法です。

併合改定とは、1級・2級の障害年金の受給権者に、さらに1級・2級に該当しない程度の障害が生じた場合の改定請求です。

以下、3つの手法について順次確認していきましょう。

注意事項

まずは注意事項です。

注意事項

注1)3級の2つの障害を併合して2級となるのは、どちらか一方または両方が以下の場合に限られます。

  • 【併合判定参考表】の3級5号
  • 【併合判定参考表】の3級6号

注2)3級と2級を併合して1級となるのは、3級が【併合判定参考表】の5号に該当する場合のみです。

注3)3級の障害が3つあれば、それぞれがすべて【併合判定参考表】の3級7号であっても、併合して2級となります。

※【併合判定参考表】とは、「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」の【別表1 併合判定参考表】のことです。

併合判定参考表 3級5号

  1. 一眼の視力が 0.02 以下、かつ、他眼の視力が 0.1 以下のもの
  2. 両耳の平均純音聴力レベル値が 80 デシベル以上のもの
  3. 両耳の平均純音聴力レベル値が 50 デシベル以上 80 デシベル未満で、かつ、最良語音明瞭度が 30%以下のもの

併合判定参考表 3級6号

  1. 視力の良い方の眼の視力が 0.1 以下のもの
  2. ゴールドマン型視野計による測定の結果、両眼のI/4視標による周辺視野角度の和がそれぞれ 80 度以下のもの、又は自動視野計による測定の結果、両眼開放視認点数が 70 点以下のもの
  3. そしゃく又は言語の機能に相当程度の障害を残すもの
  4. 脊柱の機能に著しい障害を残すもの
  5. 一上肢の3大関節のうち、2関節の用を廃したもの
  6. 一下肢の3大関節のうち、2関節の用を廃したもの
  7. 両上肢のおや指を基部から欠き、有効長が 0 のもの
  8. 一上肢の5指又はおや指及びひとさし指を併せ一上肢の4指を近位指節間関節(おや指にあっては指節間関節)以上で欠くのもの
  9. 一上肢の全ての指の用を廃したもの
  10. 一上肢のおや指及びひとさし指を基部から欠き、有効長が 0 のもの

併合判定参考表 3級7号

  1. 両耳の平均純音聴力レベル値が 70 デシベル以上のもの
  2. 両耳の平均純音聴力レベル値が 50 デシベル以上で、かつ、最良語音明瞭度が 50%以下のもの
  3. 長管状骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの
  4. 一上肢のおや指及びひとさし指を近位指節間関節(おや指にあっては指節間関節)以上で欠くもの、又はおや指若しくはひとさし指を併せ一上肢の3指を近位指節間関節(おや指にあっては指節間関節)以上で欠くもの
  5. おや指及びひとさし指を併せ一上肢の4指の用を廃したもの
  6. 一下肢をリスフラン関節以上で欠くもの
  7. 両下肢の 10 趾の用を廃したもの
  8. 身体の機能に労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの
  9. 精神又は神経系統に労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの

併合

1級・2級の障害年金の受給権者に、さらに1級・2級の障害年金を支給すべき事由が生じたときは、前後の障害を併合した障害の程度による障害年金が支給されます。

なお、もともとの障害については、以前に1級または2級に該当していれば、後の障害が生じた際に3級になっていたり支給停止中であっても問題ありません。

併合‐例①

先発2級の障害基礎年金および障害厚生年金の受給権者が、その後、厚生年金被保険者中に初診のある傷病で2級相当の障害を負った場合

先発後発併合結果
障害厚生2級障害厚生2級障害厚生1級
障害基礎2級障害基礎2級障害基礎1級

※併合後1級が決定され、先発の障害年金は失権する。

併合‐例②

先発2級の障害基礎年金および障害厚生年金の受給権者が、その後、国民年金被保険者中に初診のある傷病で2級相当の障害を負った場合

先発後発併合結果
障害厚生2級対象外障害厚生1級
障害基礎2級障害基礎2級障害基礎1級

※後発障害基礎年金の決定は行われず、併合認定後に先発障害年金の額改定が行われる。

併合‐例③

先発2級の障害基礎年金の受給権者が、その後、厚生年金被保険者中に初診のある傷病で2級相当の障害を負った場合

先発後発併合結果
対象外障害厚生2級障害厚生1級
障害基礎2級障害基礎2級障害基礎1級

※併合認定、後発障害厚生年金の額改定および先発障害基礎年金の失権となる。

初めて2級(初めて障害等級の1級または2級に該当したことによる請求)

もともとの傷病で2級以上に該当しない程度の障害状態にある人が、新たな傷病によりさらに障害状態となり、65歳までにその2つをあわせて「初めて」2級以上の障害状態となった場合の請求方法です。

被保険者要件や保険料納付要件、初診日の証明については、後発の傷病について要件をクリアしていれば足り、先発の傷病では問われません。ただし、診断書については先発後発ともに必要となります。

初めて2級‐例①

先発3級障害厚生年金受給権者(一度も2級以上になっていない)が、その後、厚生年金被保険者中に初診のある傷病で3級相当の障害を負った場合

先発後発(基準障害)併合結果
障害厚生3級障害厚生3級障害厚生2級
障害基礎不該当障害基礎不該当障害基礎2級
先発または後発のいずれか一方または両方が、併合判定参考表5号または6号の場合

初めて2級‐例②

先発3級障害厚生年金受給権者(一度も2級以上になっていない)が、その後、国民年金被保険者中に初診のある傷病で3級相当の障害を負った場合

先発後発(基準障害)併合結果
障害厚生3級対象外対象外
障害基礎不該当障害基礎不該当
(3級相当)
障害基礎2級
先発または後発のいずれか一方または両方が、併合判定参考表5号または6号の場合

初めて2級‐例③

国民年金加入中の傷病で障害等級3級相当の者が、その後、厚生年金被保険者中に初診のある傷病で3級相当の障害を負った場合。

先発後発(基準障害)併合結果
対象外障害厚生3級障害厚生2級
障害基礎不該当
(3級相当)
障害基礎不該当障害基礎2級
先発または後発のいずれか一方または両方が、併合判定参考表5号または6号の場合

初めて2級‐例④

国民年金加入中の傷病で障害等級3級相当の者が、その後、国民年金被保険者中に初診のある傷病で3級相当の障害を負った場合

先発後発(基準障害)併合結果
障害基礎不該当
(3級相当)
障害基礎不該当
(3級相当)
障害基礎2級
先発または後発のいずれか一方または両方が、併合判定参考表5号または6号の場合

初めて2級‐例⑤

先発3級障害厚生年金受給権者(一度も2級以上になっていない)が、その後、厚生年金被保険者中に初診のある傷病で2級相当の障害を負った場合

先発後発(基準障害)併合結果
障害厚生3級障害厚生2級障害厚生1級
障害基礎不該当障害基礎2級障害基礎1級
先発障害が、併合判定参考表5号の場合

初めて2級‐例⑥

先発3級障害厚生年金受給権者(一度も2級以上になっていない)が、その後、国民年金被保険者中に初診のある傷病で2級相当の障害を負った場合

先発後発(基準障害)併合結果
障害厚生3級対象外対象外
障害基礎不該当障害基礎2級障害基礎1級
先発障害が、併合判定参考表5号の場合

初めて2級‐例⑦

国民年金加入中の傷病で障害等級3級相当の者が、その後、厚生年金被保険者中に初診のある傷病で2級相当の障害を負った場合

先発後発(基準障害)併合結果
対象外障害厚生2級障害厚生1級
障害基礎不該当
(3級相当)
障害基礎2級障害基礎1級
先発障害が、併合判定参考表5号の場合

初めて2級‐例⑧

国民年金加入中の傷病で障害等級3級相当の者が、その後、国民年金被保険者中に初診のある傷病で2級相当の障害を負った場合

先発後発(基準障害)併合結果
障害基礎不該当
(3級相当)
障害基礎2級障害基礎1級
先発障害が、併合判定参考表5号の場合

併合改定

1級・2級の障害年金の受給権者に、さらに1級・2級に該当しない程度の障害が生じた場合の改定請求です。

65歳に達する日の前日(誕生日の前々日)までの間に、前後の障害を併合(一本化)し、かつ、先発の障害よりも増進すれば、65歳の誕生日の前々日までの期間内に限り、年金額の改定請求をすることができます。

先発障害については、上記の併合と同様、以前に1級または2級に該当していれば、後発障害が生じた際に3級や支給停止中であっても問題ありません。

なお、後発障害は、初診日において被保険者要件・保険料納付要件を満たしている必要があります。

併合改定‐例①

先発2級の障害基礎年金および障害厚生年金の受給権者が、その後、厚生年金被保険者中に初診のある傷病で3級相当の障害(「その他障害」)を負った場合

先発後発併合結果
障害厚生2級障害厚生3級障害厚生1級
障害基礎2級障害基礎不該当障害基礎1級
後発障害が、併合判定参考表5号の場合

併合改定‐例②

先発2級の障害基礎年金および障害厚生年金の受給権者が、その後、国民年金被保険者中に初診のある傷病で3級相当の障害(「その他障害」)を負った場合

先発後発併合結果
障害厚生2級対象外障害厚生1級
障害基礎2級障害基礎不該当
(3級相当)
障害基礎1級
後発障害が、併合判定参考表5号の場合

併合改定‐例③

先発2級の障害基礎年金の受給権者が、その後、厚生年金被保険者中に初診のある傷病で3級相当の障害(「その他障害」)を負った場合

先発後発併合結果
対象外障害厚生3級対象外
障害基礎2級障害基礎不該当障害基礎1級
後発障害が、併合判定参考表5号の場合

併合改定‐例④

先発2級の障害基礎年金の受給権者が、その後、国民年金被保険者中に初診のある傷病で3級相当の障害を負った場合

先発後発併合結果
障害基礎2級障害基礎不該当
(3級相当)
障害基礎1級
後発障害が、併合判定参考表5号の場合